産後の腰痛はいつまで続く?痛みの原因とおすすめのストレッチ
産後から腰痛がひどく、なかなか治らなくて困っています。いつまで痛みが続くのか、どうしたら改善するのかを知りたいです。
産後の慢性的な腰痛は、つらいですよね。
一般的には産後半年から1年ほどで、自然と腰の痛みが軽減することが多いですが、
運動不足で筋力が低下していたり、姿勢不良が常態化している場合は、なかなか痛みがとれないケースもあるようです。
この記事では、産後に腰痛が起こる原因と、つらい腰の痛みを和らげる・予防するためのストレッチを紹介します。
簡単なエクササイズを日常に取り入れながら、産後の腰痛と上手に付き合っていきましょう!
1.産後の腰痛はいつまで続くの?
産後に腰痛を経験する女性の割合は、30%から45 %です。(※1)
産後に腰痛が持続する期間については個人差があるので一概には言えませんが、
産後に定期的なエクササイズを行い、妊娠や出産によって低下した筋力(骨盤底筋や腹筋群)が徐々に回復してくると、産後6ヶ月から1年程度で自然に腰の痛みが軽減すると考えられます。
一方で、産後に運動不足が続いている・妊娠前の体重に戻らない・猫背や反り腰などの姿勢不良が常態化している女性においては、産後1年を経過しても腰痛が持続することがあります。
2.腰痛が治らない…産後に腰痛が起こる原因
産後に腰痛が起こる原因はいくつかあります。
2-1.骨盤の不安定性
女性の体は妊娠中に「リラキシン」というホルモンが分泌されることで、関節や靭帯が緩みやすくなります。
リラキシンの血中濃度は、出産後24時間以内に急激に減少しますが、妊娠前のレベルに戻るまでは4週間から12週間かかると言われています。(※2)
産後しばらくは、関節や靱帯は緩んでいるため、骨盤の不安定性が持続することがあります。
骨盤の安定性が欠如すると、体全体のバランスも崩れます。このバランスの乱れが腰や骨盤周りの筋肉や靱帯に過剰な負担をかけ、腰痛を引き起こします。
2-2.筋力の低下、運動不足
産後は、赤ちゃんの世話で忙しく、自分の体をケアする時間が取れないことが多いです。疲労や寝不足によって運動量が減少し、運動不足になる方も多いでしょう。
一方で、産後は骨盤底筋や腹筋が弱くなり、腰を支える力が低下することで、腰痛を引き起こすことがあります。
腹筋の衰え
産後、多くの女性は「腹直筋離開」を経験します。腹直筋離開とは、腹部の中央にある「腹直筋」が分離した状態です。
妊娠の経過とともに子宮が大きくなると、腹部の筋肉や結合組織に圧力をかけて、腹直筋が引き伸ばされます。特に妊娠後期にはこの圧力が最大となります。
ある研究によると、産後1年以内の女性における腹直筋離開の発症率は82.6%に達することが報告されています。
腹直筋は体幹の中心部に位置し、脊柱を安定させる役割を担っています。腹直筋が弱くなると、骨盤が前方に傾き、腰椎が過度に前湾する(腰を反らせた)状態になりやすくなります。これが腰痛の原因となります。
「腹直筋離開」に関する記事はこちらでも詳しく解説しています↓↓
骨盤底筋の衰え
骨盤底筋の衰えは、特に分娩による物理的なストレスや神経の損傷によって引き起こされます。
骨盤底筋は分娩時に最大で3.26倍に伸びるという研究結果(※3)もあり、これが長期的な筋力低下や機能障害の原因となることがあります 。
また、UCHealthの報告(※4)では、約40%の女性が産後6ヶ月経っても腰痛を経験しており、これは腹筋と骨盤底筋の弱化が主要な原因の一つとされています 。
2-3. 育児による姿勢不良
産後の女性が腰痛を経験する主な原因の一つに、育児中の姿勢不良があります。授乳や抱っこ、おむつ替えなどの育児動作は、腰に大きな負担をかけることが多いです。
例えば、長時間の前かがみ姿勢や不自然な体勢での作業は、腰部の筋肉や関節にストレスを与え、痛みを引き起こします。
特に授乳時に前かがみになることで、背中や腰に過度な圧力がかかり、腰痛を悪化させることがあります。
また、赤ちゃんを抱っこする際に片側の腰に重心をかけることも、腰の片側に負担をかけ、不均衡な筋肉の使い方が原因で痛みを生じることがあります。
2-4.神経圧迫
出産後に腰痛が発生する主な原因の一つに、神経の圧迫があります。
妊娠中の体重増加や姿勢の変化、そしてホルモンの影響によって、骨盤や脊椎周辺の神経が圧迫されやすくなります。
特に、腰椎から脚にかけて伸びる「坐骨神経」が圧迫されることで、この状態は「坐骨神経痛」として知られています。
坐骨神経痛になると、腰から臀部、太もも、ふくらはぎ、さらには足の先にかけて、鋭く、刺すような痛みやしびれが生じます。
2-5.育児ストレスと疲労
育児によるストレスや睡眠不足が体の緊張を引き起こし、腰痛を悪化させることがあります。
新生児の世話は体力的にも精神的にも負担が大きく、特に夜間の授乳やおむつ替えで頻繁に起きることは、睡眠の質を低下させます。睡眠不足は、筋肉の回復を妨げ、疲労感を増加させ、腰痛のリスクを高めます。
また、育児ストレスも腰痛の原因となります。初めての育児は、予想以上にストレスを伴うことがあります。ストレスは筋肉の緊張を引き起こし、腰部の筋肉にも負担をかけることがあります。
3.産後の腰痛を緩和・予防するストレッチ
3-1.痛みを和らげるストレッチ
キャットアンドカウ
やり方:
- 四つん這いになり、手首が肩の真下に、膝が腰の真下にくるようにする。
- 息を吸いながら背中を反らし、頭を上げて天井を見る(カウポーズ)。
- 息を吐きながら背中を丸め、顎を胸に引き寄せる(キャットポーズ)。これを呼吸に合わせて5~10回繰り返す。
このポーズは、背骨の柔軟性を高め、腰痛を和らげる効果があります。
ダウンドッグ
やり方:
- 四つん這いの姿勢でつま先を立てる。肩の真下にある手を手のひら一枚分前にセットする。
- 息を吸いながら膝を床から持ち上げて、息を吐きながらお尻を天井に向けて引き上げる。
- 膝は軽く曲がっていていいので、体が逆V字になるように、腕から背中を一直線に伸ばす。視線はつま先かおへそへ。
- 深くゆったりとした呼吸を続けながら、3呼吸キープする。
このポーズは、背中・ハムストリングス・ふくらはぎなど全身の筋肉を一気にストレッチすることができます。
背骨を伸ばすことで、脊椎の圧迫を減少させ、腰痛の原因となる神経の圧迫を軽減します。
また、頭を心臓より低い位置に置くことで、血流が促進され、筋肉や組織に新鮮な酸素と栄養が供給されます。これにより、筋肉の回復を助け、炎症を軽減する効果も期待できます。
ポーズから抜けた後はチャイルドポーズでおやすみしましょう。
チャイルドポーズ
やり方:
- 四つん這いの姿勢から、膝をマットの幅に広げ、つま先を合わせる。(膝を広げることで、腰がリラックスしやすくなります)
- 息を吐きながら、お尻をゆっくりとかかとの上に下ろす。
- 上体を前に倒し、額をマットに付けます。腕は前方に伸ばすか、体の横に沿わせてリラックスさせる。
- 深くゆっくりと呼吸をしながら、30秒から1分間キープする。
3-2.痛みを予防するストレッチ
ブリッジポーズ
やり方:
- 仰向けに寝て、膝を曲げ、足を腰幅に開いて床に置く。両腕は体の横に沿わせ、手のひらを下向きにしておく。
- 息を吸いながら腰を持ち上げ、肩と足で体を支える。
- 10〜15秒間キープし、ゆっくりと下ろす。これを5〜10回繰り返します。
ブリッジポーズは、腰部の筋肉および骨盤底筋を強化することで、脊柱・骨盤の安定性を高め、腰椎への負担を軽減させることができます。
コブラポーズ
やり方:
- うつ伏せになる。足を腰幅に開き、足の甲をマットに寝かせる。
- 手のひらを胸の横に置き、肘を曲げ、脇をしめる。
- 息を吸いながら、上体をゆっくりと持ち上げる。胸を前に開き、肩甲骨を背中に寄せる。
- 目線を前方または上方に向ける。肩をリラックスさせて3呼吸キープ。
- 息を吐きながら、ゆっくりと上体を床に戻します。頭を最後に下ろすようにして、元の姿勢に戻る。
4.産後の腰痛対策
4-1.正しい姿勢の維持
産後の女性は、赤ちゃんの世話や授乳などで前かがみの姿勢になることが多く、腰に負担がかかりやすいです。正しい姿勢を心がけることは、腰痛の予防対策としてとても重要です。以下のポイントに注意して姿勢を保つようにしましょう。
- 立つとき: 背筋を伸ばし、肩をリラックスさせて自然な位置に保ちます。お腹に軽く力を入れて骨盤を中立に保つことが大切です。
- 座るとき: 座るときは背もたれに背中をしっかりと預け、腰のカーブをサポートするためにクッションを使用します。足を床にしっかりとつけ、膝が90度になるように調整します。
- 授乳時: 授乳の際は、赤ちゃんを自分の方に引き寄せるようにし、自分が前かがみになるのを避けます。授乳用のクッションを使用することで、赤ちゃんの位置を高く保つことができます。
4-2.スキマ時間にこまめな休息とケア
育児中は忙しく、長時間の休息を確保するのが難しい場合が多いですよね。しかし短い時間でも休息を取ることで、身体の負担を軽減できます。
例えば、赤ちゃんが昼寝をしている間やひとり遊びをしているときに、何気なくスマホでSNSやネットニュースを見ている…なんてことはないでしょうか。
日常のちょっとしたスマホ時間にストレッチを行うだけでも腰部の緊張を和らげることにつながります。
筆者は授乳中や寝かしつけのときに腹式呼吸を意識していました。深い呼吸はリラックスを促しますし、体幹の強化にもつながるので一石二鳥ですよ。
5.まとめ
産後の腰痛は多くの女性が経験する不調のひとつで、日常生活に大きな影響を与えます。正しい姿勢を心がけ、ストレッチやヨガなどで継続的なケアを行うことが大切です。
腰部の筋肉をリラックスさせ、腹筋・背筋・骨盤底筋などの筋肉を強化することで、脊柱や骨盤の安定性が高まり、腰への負担を軽減することに繋がります。自分の体を大切にし、健やかな産後の生活を送っていきましょう!
▼主な参考文献
- ※1:Musculoskeletal Disorders of Pregnancy, Delivery and Postpartum(Musculoskeletal Key)
- ※2:Do Relaxin Levels Impact Hip Injury Incidence in Women? A Scoping Review(flontier)
- ※3:Advancing care for childbirth-related pelvic floor disorders(mayoclinic)
- ※4:Pelvic floor health after pregnancy(UC Health Today)
産後ヨガ講師。公民館や児童館での子連れヨガレッスン開催や、産後の心身のケアについて執筆を通して、ママのサポートに励んでいる。プライベートでは2人の男の子の子育てに奮闘中。