産後、骨盤がグラグラで歩きにくい…いつまで続く?原因とセルフケアを解説

産後ママ

骨盤がグラグラして歩きにくい。産後どのぐらいで骨盤はもとに戻るの?

ヨガ講師
さとみ

出産後、多くの女性が骨盤の不安定さを感じます。適切なケアをすれば、産後数ヶ月ほどで症状は軽減されていきます。

妊娠中に分泌される「リラキシン」というホルモンの影響で、産後はしばらく骨盤周りの靭帯や関節が緩んだ状態が続きます。

通常、産後数か月ほどで症状は改善されますが、個人差も大きく、適切なセルフケアやエクササイズが必要です。

この記事では、骨盤の不安定感が続く原因と、改善のための具体的なセルフケア方法を解説します。

1.産後に骨盤がグラグラする原因

産後に骨盤が不安定に感じる理由の一つに「リラキシン」というホルモンの影響が考えられます。

リラキシンとは妊娠中に分泌されるホルモンで、

  • 骨盤周りの関節や靱帯を緩め、出産時に赤ちゃんが産道を通りやすくする
  • 子宮の筋肉を柔軟に保ち、子宮収縮を抑制する
  • 血液循環を促し、母体と胎児に必要な酸素と栄養を供給する

など妊娠の維持と出産のために大切な役割を果たしています。

リラキシンは骨盤周辺の関節や靭帯を緩めるだけでなく、他の関節(膝や足首、肩など)にも影響を与え、不安定さが増すことがあります。

リラキシンは産後いつまで分泌される?

リラキシンは、妊娠初期(妊娠4週ごろ)からリラキシンの分泌が始まり、妊娠10〜12週ごろに分泌量がピークに達し、妊娠後期にかけて徐々に減少していきます。

出産後、リラキシンのレベルは急激に減少します。

例えば、ある研究では「出産後3日目までに正常な非妊娠時のレベルに近づく(1)」ことがわかりました。

また別の研究では、「産後 1 週間以内に急激に減少し、2 週目までに通常の非妊娠時の濃度に戻る(2)」と発表されています。

したがって、血中のリラキシン濃度は産後1週間程度で検査の感度を下回るレベルまで低下し、体外に排出されることを示しています。

産後数週間でリラキシンの影響が減少すると、靭帯や関節が再び引き締まり始めます。

しかし回復の速度は、体質や出産の影響、運動習慣、出産前の体力状態に影響され、個人差が大きく、完全に骨盤が安定するまでには、数ヶ月ほど時間がかかる人もいます。

授乳しているとリラキシンの分泌が続くってホント?

一部のサイトでは「授乳中の女性は、授乳していない女性に比べて産後のリラキシンのレベルが高い」という情報も目にしましたが、現時点では決定的な研究結果は見つかっていません。

そのため、授乳とリラキシンの分泌に関連性はないというのが私の見解です。

例えば、Lafayetteら(2011)の研究では、妊娠後期から産後初期にかけてリラキシンのレベルが急速に減少し、産後2週目までには妊娠前のレベルに戻ることが確認されていますが、授乳の影響については特に言及されていません。

他の研究でも、リラキシンの産後のレベルは妊娠中のピークと比較して非常に低いことが一貫して報告されていますが、授乳とリラキシンレベルの具体的な関連性に関するデータは見当たりませんでした。

2.骨盤がグラグラするってどんな感じ?

骨盤がグラグラする感覚は、出産を経験した女性の多くが経験します。私の産後ヨガクラスに参加しているママさんからは、

産後ママ

骨盤がしっかりと固定されていないように感じて、立ったり歩いたりする際にグラつく

産後ママ

立ち上がるに痛みがでやすく、歩行時もスムーズに足がでない

などのお悩みを聞くことがあります。

産後は赤ちゃんを抱っこして歩くことも多いため、骨盤が不安定だと転びそうになったりしてヒヤッとしますよね。

骨盤ベルトを装着することで症状が緩和されることもあります。

また、骨盤の安定感を根本から取り戻すためには、妊娠や出産で衰えた骨盤周りの筋肉を鍛えることも重要です。

3.産後の骨盤を安定させるセルフケア方法

ここでは、産後に骨盤を安定性を高めるためのセルフケア方法を3つお伝えします。

3-1.骨盤底筋を鍛える(ケーゲル体操)

骨盤底筋(インナーマッスル)は骨盤を下から支える役割を担い、特に立位や歩行時に骨盤の安定性を高めます。ケーゲル体操を日常に取り入れることで、骨盤の安定性が向上し、歩行時のバランスが改善されます。

やり方

・椅子に座り、背筋を伸ばす。

・吸う息で力を緩め、吐く息で会陰部を上方・内側へと引きこむ。

・おしっこを我慢するように、圧迫を維持し、骨盤底が引き上がるのが感じられたら正解◎ 

・呼吸に合わせて10回を1セット、1日に3セット行う。

ヨガ講師
さとみ

トイレに行った時、シャワーを浴びる時、歯磨きの時や授乳中など、特定の時間にケーゲル体操を行うようにすると継続しやすいですよ。

3-2.体幹(コア)を鍛える

体幹の筋力を強化すると、骨盤を支える力が高めり、歩行時の不安定感も軽減していきます。

産褥期を過ぎたら無理のない範囲で、体を動かしましょう。

産後は腹筋群が衰えている方がほとんどなので、最初は呼吸法やキャットアンドカウなど強度の低いポーズから体を慣らしていくのがおすすめです。

時間をかけて腹筋群の柔軟性と筋力を取り戻し、体の回復に合わせてブリッジやプランクなどの体幹トレーニングを継続していきましょう。

4.骨盤が不安定で歩きにくいときは?

「歩く時にぐらつく・不安定な感じがする」と悩む方は多いですが、出産でダメージを受けた体が回復するまでの間は、骨盤ベルトの使用をお勧めします。

骨盤ベルトを使うことで、骨盤周りをサポートし、不安定さを軽減できます。骨盤をしっかりと固定することで、歩行時のぐらつきや不安定感を抑えることができるでしょう。

ベルトは正しい位置に装着し、適度な締め具合を保つことが重要です。

5.まとめ

この記事では、骨盤の不安定感が続く原因と、改善のための具体的なセルフケア方法についてご紹介しました。

産後の骨盤ケアには、骨盤底筋を中心とした筋肉を強化し、体全体のバランスを整えることが重要です。無理をせず、自分のペースで少しずつ取り組むことが大切です。

もし痛みや不快感が続く場合は、理学療法士や専門家に相談することをおすすめします。

<主な参考文献>

  • 1)Harvey, M -A.; Johnston, S L.; Davies, G A.L.. Non-Oral Poster 80: Second Trimester Serum Relaxin Concentrations are Associated with Pelvic Organ Prolapse Following Childbirth. Journal of Pelvic Medicine and Surgery 10():p S50, | DOI: 10.1097/01.spv.0000134164.12309.e4
  • 2)Lafayette RA, Hladunewich MA, Derby G, Blouch K, Druzin ML, Myers BD. Serum relaxin levels and kidney function in late pregnancy with or without preeclampsia. Clin Nephrol. 2011 Mar;75(3):226-32. doi: 10.5414/cnp75226. PMID: 21329633.