産後の骨盤底筋トレーニング完全ガイド:簡単で効果的なエクササイズ
出産後、身体の変化に戸惑ったり、日常生活で思いがけない不調を感じたりしていませんか?
尿漏れや腰痛、骨盤のぐらつきなど、産後の女性が共通して抱えるお悩みは、「骨盤底筋」の衰え」が関係していることが多いです。
特に、「くしゃみをしただけで尿が漏れる」「体を動かすのが以前よりつらい」といった症状は、赤ちゃんのお世話で忙しい中でも、気になる問題だと思います。
骨盤底筋を鍛える方法が知りたいけど、何から始めたらいいかわからない。時間をかけずにできる方法が知りたい
そんなママたちの声を踏まえて、この記事では「簡単で効果的な骨盤底筋エクササイズ」をわかりやすく紹介します。
産後の体をケアして、健康で快適な日々を取り戻しましょう!
1.骨盤底筋とは?出産による影響と鍛えるメリット
ここでは、骨盤底筋とは何か、妊娠や出産が骨盤底筋に与える影響、産後に骨盤底筋を鍛えるメリットについてお伝えします。
1-1.骨盤底筋とは
骨盤底筋とは、骨盤の底部に広がる筋肉群の総称です。
骨盤底筋の主な役割は、
- 臓器の支持:膀胱、子宮、直腸などの臓器を正しい位置に保持する
- 排泄のコントロール:尿道や直腸の開閉を調節し、尿や便の排泄をコントロールする
- 姿勢の安定化:骨盤と脊柱を支える
などの役割を持ち、女性の健康において非常に重要な筋肉の一つです。
1-2.妊娠・出産による骨盤底筋への影響
妊娠・出産を経た女性の体は、大きな変化を経験します。その中でも、骨盤底筋は妊娠と分娩による損傷を受けることで機能が低下しやすい部分です。
妊娠中、骨盤底筋は胎児の成長に合わせて伸びる必要があります。さらに分娩時は赤ちゃんが産道を通過することで強い負荷がかかり、筋肉や組織が損傷を受けます。
骨盤底筋の機能の低下は、
- 尿漏れ:くしゃみや咳をしたときに漏れる
- 骨盤の不安定感:腰痛や姿勢の悪化する
- 性生活の不満:筋肉の緩みからくる感覚の低下する
など、女性の生活の質を低下させる可能性があります。
実際、妊娠中から分娩1ヶ月の間に尿もれがあったと回答した女性は54.5%も存在します。そのうち、産後も継続して尿もれを経験した女性は23.3%もいることが明らかになっています(※1)
さらに、産後1ヶ月の女性92名を対象に骨盤底筋の収縮力と持続時間を計測した調査によれば、
- 一般女性を対象に測定された骨盤底筋力では、最大収縮力 1.3 kgf・最大収縮時間7.9 秒であったのに対して、産後1ヵ月時の平均最大収縮力 は 0.74 kgf・平均最大収縮時間は 3.29 秒である
- 骨盤底筋の随意収縮が確認できない女性が9名(9.8%)存在する
- 骨盤底筋の随意収縮が可能な女性のなかには最大収縮 時間=/秒で収縮を持続させることが困難な女性が 16 名(17.4%)存在する
ことが明らかになっています。(※2)
産後は膣や肛門を締めるための筋力が低下するだけでなく、収縮を持続させることが難しく感じる女性もいるようです。
産後は赤ちゃんのお世話や家事などで体への負担が増える時期で、自分の体のケアを後回しにする女性も少なくありません。
骨盤底筋のケアを怠ると、不調が長引いたり悪化したりする可能性もあります。
出産によって骨盤底筋はダメージを受けます。尿もれなどの自覚症状がない場合でも、産後は骨盤底機能の回復をさせるためのトレーニングに取り組むことをおすすめします。
1-3.骨盤底筋を鍛えるメリット
骨盤底筋トレーニングを継続することで得られるメリットは多岐にわたります。
- 尿漏れの改善
- 骨盤の安定性向上
- 腰痛の予防
- 姿勢の改善
さらに、全身の血流を良くし、リラックス効果を得ることもできます。
2.骨盤底筋トレーニングはいつから?始める前の注意点
ここでは、産後の骨盤底筋トレーニングを始める時期の目安や注意点をお伝えします。
2-1.産後8週以降から少しずつ
産後すぐのトレーニングは体に負担をかける場合があります。
骨盤底筋トレーニングは出産後6〜8週間が経過し、医師から運動の許可を得てから始めるのが安全です。
特に会陰切開や帝王切開を経験した場合、回復が進んでいるか医師に確認してください。
2-2.体の回復に合わせた強度で取り組む
骨盤底筋トレーニングに限らず、産後の運動は体調が優れないときは、無理をせず休むことが大切です。
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2-3.焦らずに毎日コツコツ続ける
骨盤底筋トレーニングは即効性が期待できるものではありません。
1日5〜10分の短い時間でも、毎日コツコツ続けることが効果を実感するための鍵です。
3. 産後におすすめの骨盤底筋トレーニング
ここでは、初心者でも簡単に取り組める骨盤底筋エクササイズを紹介します。
3-1.ケーゲル体操
ケーゲル体操は、骨盤底筋を鍛える基本的な方法です。
手順:
- 仰向けになり、両膝を立てて足を肩幅に開く
- 肛門や膣を「引き締める」感覚で筋肉を5秒間締める
- ゆっくり筋肉を緩めて10秒休む
- この動きを10回繰り返す
ポイント:
- 呼吸を止めない
- 太ももやお尻の筋肉を使わない
骨盤底筋は可視化できないため、正しく行うことができているのかわからないという女性も多くいます。
骨盤底筋の収縮をさせることができず、お腹やお尻、太ももなどの別の筋肉を収縮させてしまう方も少なくありません。
もし骨盤底筋を収縮させる感覚が掴みにくい時は、手を清潔に洗ってから中指を膣へ挿入し、息を吐きながら「指を締め付ける」「指を持ち上げてお腹の方へ引き込む感じ」で行うと骨盤底が締まる感じがわかりやすいです。
手前だけが持ち上げるのではなく、膣全体をグッと上に引き上がる感覚が意識できると効果を実感しやすいと思います。
3-2.橋のポーズ
骨盤底筋だけでなく、背中やお尻の筋肉も同時に鍛えられるエクササイズです。
やり方:
- 仰向けになり、膝が足首の真下にくるようにして足を腰幅に開く
- 両手を体の横に置き、手のひらを床に向ける
- 息を吸いながらゆっくりと腰を上げ、体を一直線にする
- 息を吐く時に骨盤底筋を締める感覚を意識する
- ゆっくり元の位置に戻す
- 膝を軽く抱えて腰を揺らし骨盤周りをリラックスさせる
ポイント:
- 腰を反りすぎないようにお腹は薄く保っておく
- 膝が外に開かないように内ももを軽く引き寄せる意識を持つ
- 最初は1呼吸から始めて、慣れてきたら3呼吸キープする
3-3.キャット&カウ
キャット&カウはヨガでおなじみの動きですが、骨盤底筋を鍛える上でもおすすめのポーズです。
やり方:
- 四つん這いの姿勢をとる
- 息を吐きながら背中を丸める。骨盤を後傾させ尾骨を内側に引き込む意識を持って、骨盤底を引き上げる
- 息を吸いながら背中を反らせて胸を開く。骨盤を前傾させ尾骨を天井に向け、骨盤底はリラックスさせる
- 呼吸と骨盤の動きに合わせて、骨盤底の緊張と弛緩を繰り返す(5呼吸程度)
ポイント:
- 呼吸と骨盤の傾きに連動させて、骨盤底筋の弛緩と収縮を繰り返す
骨盤底筋は、骨盤が前傾の時にストレッチされ、骨盤が後傾の時に収縮しやすくなります。
この関係を踏まえた上でトレーニングを行うと、適切に骨盤底筋の柔軟性と筋力を保つことができます。
3-4.スクワット
スクワットは骨盤底筋を鍛えるだけでなく、全身の筋力アップにも効果的です。
手順:
- 足を肩幅より少し広めに開き、つま先をやや外向きにする
- 軽く膝を曲げて、膝とつま先の向きを揃える
- 手を胸の前で組み、吸う息でゆっくりと膝を曲げる
- 太ももが床と平行になる位置か、それより少し上ぐらいまでしゃがむ
- 吐く息で骨盤底筋を締める(吸って緩めて、吐いて締めるを2セット)
- 吐く息でゆっくりと立ち上がり、骨盤底筋を軽く引き上げる意識を持つ
ポイント:
- 膝がつま先より前に出ないようにする
- 立ち上がる時に内腿を引き寄せる感覚を持つ
- 腰をそりすぎないように下腹部は軽く引き締めておく
まとめ
骨盤底筋トレーニングは、産後の女性が健康を取り戻し、快適な生活を送るための重要な手段です。
簡単で効果的なエクササイズを日々取り入れることで、無理なく体の回復をサポートできます。
まずは自分のペースで始め、継続することを目指しましょう。
産後ヨガ講師。公民館や児童館での子連れヨガレッスン開催や、産後の心身のケアについて執筆を通して、ママのサポートに励んでいる。プライベートでは2人の男の子の子育てに奮闘中。